言語学漫談を楽しもう

小原 金平

『脳がほぐれる言語学―発想の極意』(金川欣二著、ちくま新書)

 『脳がほぐれる言語学―発想の極意』(金川欣二著、ちくま新書)という本がある。高度な言語学の議論を内容にしながら、話を漫談風に展開させている。ギャグが連発され、話題が自由自在に飛び回るのでまとまりのない本のように思われるが、この一貫性がないように見えるのがむしろ魅力である。著者もあとがきで「この本を読んで言語学ではなく、言語ギャグだと思った人もいるかもしれないが、僕が色紙に書くのは「ギャグもまた真なり」なので諦めてほしい」と断っている。本の宣伝文句には、「“笑う言語学”による「創造的なひらめき」を得るためのヒント集」とある。なるほどと笑えることが多い。一度さらっと読み終えて、次は考える材料を求めて読み返すのがいい。

 発想を中心的テーマにした本だ。現代の我々誰もが興味をもつテーマだろう。目次は、第一章「発想を妨げるもの」、第二章「言語を反省する」、第三章「たった一つの正解で満足?」、第四章「果報は寝て待て」と、聞いただけで読みたくなるようになっている。

 さすがにことばを話題にするだけあって、ことばそのものをうまく扱っている。第三章「たった一つの正解で満足?」では、いろいろなクイズの例が出される。よくある心理学のクイズに似ているが、実はことばに関したものが中心であり、言語に「正解」はないということが説かれる。たとえば、ニッポンが正しいかニホンが正しいかいくら議論しても、決して結論は出てこない、という。また、英単語の意味を考えてみても、break =「壊す」とだけ覚えてはいけない。I broke this one to eat. が分からなくなる。答えは「卵を割る」である。

 特徴的なのは、文章の中に言及される著書、言語学者(に限らず小説家、随筆家、etc.)、あるいは引用される名言、コメントの数が非常に多いことである。しかし、ヒント集であるから、それぞれが詳しく語られるということはない。読者は、これらのうちから興味をもったものを、自らが直接読んだりして探求するのが理想であろう。

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