これで人生が変わる?!英語学習本のベストセラーたち

新村 知子

 英語学習には、みんな苦労しているようで、日本で発行されている英語学習本にも、ミリオンセラーになるものがいくつかある。本屋をぶらついていると、「このやり方でTOEIC800点を達成!」や「この英語学習で人生が変わる!」など、センセーショナルなコピーがついたものも多い。今月は、これらのベストセラーたちが提唱する英語学習法をのぞいてみたいと思う。

 まず、誰でも知っているのが『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』(向山淳子+向山貴彦、幻冬舎、2001年)だろう。シリーズ累計200万部突破だそうだ。本書の大部分は、SVO(主語+動詞+目的語)などの英語文の基本的な仕組みを猫のイラストで押さえている。この基本を理解したあとは、自分のレベルにあった洋書を読み続ければ英語は習得できるという考え方からなっている。現在は公式ホームページも持ち、初級者向けのリーディング本も何冊か発行しており、こちらも売れ行きが好調なようである。外国語学習には多くのインプットが必要であること、大人の学習者は基本的な文法学習なしに習得することが難しいことを基礎に、読者に分かりやすいシンプルな学習法を提唱している。

 『英語は絶対、勉強するな!―学校行かない・お金かけない・だけどペラペラ』(鄭 讃容 (著), 金 淳鎬 (原著)、サンマーク出版、2001年)こちらも、シリーズ全体で100万部を超えたベストセラーで、現在はコンピュータソフトも売り出している。学校へ行かなくても、お金をかけなくても英語が勉強できることをアピールし、「聞き取り」と「書き取り」を徹底的にやることに重点を置いた学習法を提唱している。しかし、タイトルにあるように「勉強しなくても英語ができるようになる」というのは、本当ではない。独学ではあるが、CDなどを使って英語を徹底的に聞き、それを書き取っていくということの繰り返しの学習法であるから、かなりの意欲と根気が必要なことは間違いがない。こちらは、文法学習は必要がないと主張している。聞き取った英語をすべて書き取るところまで、徹底的に英語を聞きこんでいくので、書き取る段階で英語の規則的なパターンというものを少しずつ習得させようという考え方であろう。

 『CDブック 英会話・ぜったい・音読―頭の中に英語回路を作る本』(国弘 正雄 (編集), 千田 潤一、講談社インターナショナル、2000年)は、音読によって英語をマスターしようとする多くの学習本の代表的な一冊である。意味を理解していない英語を音読しても、言語習得には役に立たないが、意味を理解している英語に触れることにより、インプットとして消化され、英語力が向上するのだろう。ただし、学習者の意識が音ばかりにとらわれて、意味に向かない場合も考えられるので注意が必要である。しかしその昔、テープもCDもビデオもなかった時代に、音読によって英語力向上に成功した多くの英語の達人が存在したことも事実である。日本人で英語が苦手な人たちの多くが、「英語を音声化しない」、つまり、発音に注意していない、声に出して英語を読んでいない(話していない)と言われている。音読による言語習得への効果は、理論的には解明されていないが、国弘氏を始め、多くの学習者が体験的にその効果を実感していることも事実である。本書にあるように、CDを聞く、意味を理解する、声に出して読む、さらに音読しながら「筆写」するというトレーニングを続ければ、かなりの学習効果は期待できるであろう。

 この他にも、「シャドーイング」(聞いた文をすぐ後に続けて言うトレーニング)や、「英語で日記を書く」、「英語脳(耳)を作る」など、理論的なもの、体験的なもの、効果がありそうなもの、不思議なものまで、さまざまな学習本が見られる。
 一つ、英語学習で確かなことは、「継続は力なり」ということである。どんな学習法も続けなければ役に立たない。ある研究によれば、英語学習に成功しない人たちの傾向として、「目標は高いが自発的な学習をしない」「継続的な努力をしない」などの共通要素があるそうである。つまり、英語学習で成功したければ、これと反対のことをすればいいのである。

 これらのベストセラーに共通することは、「学習法がシンプルなこと」、「自発的にやらなければならないこと」、そして「継続的にインプットを取り入れる活動を行っていること」であろう。最初は、どの学習法を選んでもいいだろう。一つのやり方を決めて、具体的な目標、計画を決め、毎日少しずつトレーニングすること。これが一番簡単なようで、一番難しい。この最初の関門を突破できない学習者たちのために、これからも多くの「これだけで英語がマスターできる」学習本が次々と作られているのだろう。

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