仁と文子の仁・文(人文)問答

槻木 裕

 「やあ、文子先輩、お久しぶり。僕は今年受験で、あれこれ考えているんすが、先輩は金沢学院大・文学部の国際文化で何を勉強しているのです? 国際文化学科と言えば、昔は英米文学科だったんでしょ。そんなに英語ができたっけ?」

文子 「アーラ、相変わらず失礼ね。英語が好きになりたいと思ったけれど、点数が伸びなかっただけだわよ。あんたより成績が良かったはずよ。でも大丈夫、ウチには人間文化コースというツオーイ味方があるんだから」

 「何すか? その人間文化、略してジンブンって? オレたち二人の名前を合わせたみたいじゃないっすか」

文子 「このホームページを担当しているオッサンがアホやから、芸のない語呂合わせになっているけど、人文はジンモンとも言うの。由緒正しい、れっきとしたお勉強よ」

 「そうか。何かよう解からんけど、英語や国語が得意でなくてもいいんだな」

文子 「あんた、相変わらず勉強してないわね。文学部の勉強が文学中心と思うのは古いわよ。社会、文化、人間‥‥これあっての文学よ。文学は人文科学のほんのワンコーナー。生きた人間、生きて鼓動する社会、その底にひそむ文化の輝き‥‥これが私の青春バーリバリの研究対象よ。♪ラーララ♯ラ」

 「なんだが恋に恋する悪い病気が治っていないみたいっすねえ」

文子 「あら、言うわね。ここんところ気分が上向いているだけよ。一年生のときに『人間文化基礎演習』というのがあって、それを受けるとこうなるわけ。私は憲法9条問題をテーマとした基礎演習に出席したの。自衛隊が合憲か違憲かということも関心があるけれど、憲法のできたころ、60年安保闘争などの歴史も見ていくわけよ。要するに一つのテーマから関係の深いことを次々に調べて行くんだな。これが高校の勉強と違うんだ」

 「へえー、それで総合的な勉強というわけだ」

文子 「それだけで総合的と言うのじゃないの。戦後史は戦前とつながっているから、戦前の日本のこともやるし、明治憲法の天皇機関説というのも学んだし、すると日本の国際関係の基礎知識も増えるわけ。そしてね、日本人の国家に対する見方がおぼろげに分かってくると、西洋の社会に対する見方との違い、人間個人をとらえるとらえ方の違いが浮かび上がってくるわけよ。これが文化の相違を知るということなんだな。それにね、プレゼミという授業もあってね。関連したことをやるシステムになっている」

 「一年生のときから、そういう勉強に馴れさせるというわけだ」

文子 「そう、自分の興味に合わせて、自分の方向を考えていくの。社会学、国際関係、文化人類学、心理学、思想、現代史、文学、みんな絡んでいるからね」

 「ねえ、演習とかゼミとか、それがよく分からないんだけれど」

文子 「自分で調べていって、みんなの前で発表するわけ。よく調べていかないと、みんなから質問されて困るわ。そういう授業の形式。高校ではあまりないわね。まあ、プレゼンテーションの練習も兼ねているから、就職活動にも役立つと思う」

 「なるほど、そういう勉強だと英語が得意でなくてもいいわけだ」

文子 「まあ、そうだけど、私はこういう勉強をしているおかげで、返って英語の必要性を感じたな。だって、外国人が日本をどう見ているか、見ていたか、それも知りたいじゃない。そんなときにすぐ隣に英語のコースがあるというのは便利よ。二年生では英語中心に自分の時間割を組んでみようと思っているの」

 「そういうのができるの?」

文子 「できるわけ。英語のコースの人が英語できるわけというのでは必ずしもないからね。私もひそかに派遣留学を考えているのよ」

 「英語は相変わらず苦手だが、オレでも人間文化コースがつとまるかな?」

文子 「つとまる、つとまる。日本語さえできれば十分、十分。このコースに入れば、人間の考え方とか社会ということに自ずと関心が高まってくるし、むずかしいことばや文章も書けるようになる。それにあんた、もともと私よりもそういうことが好きじゃない?」

 「おもしろそうだな、世界が広がって。小説をやるのはカッタルイと思っているし、オレにちょうど合っているかもね」

文子 「そうそう。勉強の仕方が違うんだから、あんたの個性がこのコースできっと引き出せて、自分でも驚くわよ。私もそう感じているから、大学生だなと自分でも思う」

 「それで、♪ラーララ♯ラなわけだ。よし、考えてみよう。今日はどうもありがとう」

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