心理学特殊講義I(実験・行動)

心理学特殊講義I(実験・行動)

中崎崇志

講義の風景 『特殊講義』と聞くと『いったい何をするんだろう?』と首をひねる人の方が多いかもしれない。『特殊』という言葉に何やら大げさなものを感じる人もいるだろう。ひょっとすると,心理学の世界でもあまり一般的でない,何か特殊な内容を扱うのかもしれない,と考えるかもしれない。
 確かにあまり馴染みのない名前だが,実は大学の講義名としてはそれほど『特殊』なものではない。ある特定の分野のさらにある特定のテーマ,というように,一つの内容だけを深く掘り下げる形の講義を『特殊講義』と呼んでいる。本学で今年度以降開講される心理学特殊講義には,カッコ付でその講義で取り上げる分野が示されるようになった。
 今年度の特殊講義の分野は『実験・行動』である。心理学で「行動」と言う場合は,人間ばかりでなく他の動物も含めた生活体の,ありとあらゆる行為や活動を指すので,テーマとしてはかなり幅広い。今回は,その中から『動機と動機づけ』を取り上げた。「何かをしようとする心の働き」そのものを動機,その動機があるのかないのか,あるならどれくらい強いのか,などを扱うのが動機づけ,と言えば,わかってもらえるだろうか。
 「お腹が空いてものが食べたくなる」というような単純な動機の解説から始まり,私たちの持つ好奇心=内発的動機や,周囲に人がいるだけで物事への取り組み姿勢が変わってしまう,というような社会心理学的な視点から考えられる動機づけと行動の関係など,幅広く取り上げている。
 例えば「お腹が空いた」=空腹状態は,「食べる」行動を起こさせる。言い換えると,「食べる」行動の背景には「空腹」という動機が存在する,ということになる。これだけで済めば単純なのだが,動機には「強さ」がある。「ちょっと小腹が空いた」程度の空腹感なら,そんなに切実に「食べたい」とは思わないだろうし,お菓子をちょっとつまむ程度で満足できる。一方,「忙しくて昼食を抜いてしまって,お腹が空いた」という空腹感は,より強く「食べる」行動を起こさせようとする。そして,食べたことによって空腹状態が解消されると,「食べる」ことへの動機づけは下がる=動機が充足されるので,「食べる」行動そのものが起こりにくくなるわけだ。
 私たちは日常生活の中で多様な行動をおこなっていて,その背景にはそれに応じた動機とその強さが存在している。さまざまな角度から,人間(あるいは他の動物)の持つ動機と動機づけについて理解して,自分の行動や他人の行動について考えるきっかけにしてほしい。

 

【受講生の感想】

高橋 彩
 『心理学特殊講義?(実験・行動)』という授業は、私たちがあたりまえに過ごしている日常の中での「お腹がすく」「のどが渇く」「やる気がなくなる」などの簡単なものから複雑なものまで人間の行動や行為などの関係や、その背景に隠れている「なぜそうなるのか」といった動機を学んでいく授業です。
 この講義が始まる前は、他の授業のように堅苦しい雰囲気が流れていて、授業が進むのが遅く、眠気を感じさせる授業なのかと予想していました。しかし、授業の回数を重ねていくにつれて心理学ならではの実験の説明や内容、人物など数え切れないほど出てくるけど、担当の先生は私たちが過ごしている日常の中で起きていることなどと関連させながら分かりやすく紹介しているので心理学特殊講義という授業は私が思っているほど分かりにくくて雰囲気が硬い授業ではないということがとても印象に残りました。

中村貴昭
 1年生のときに『心理学』、『応用心理学基礎』という授業を受けました。『社会コミュニケーション論』や『プレゼミ』という授業でも心理学に関係する内容がありました。2年生になってからは、『心理学初級実験』、『心理学研究法』、そして『心理学特殊講義?』を受けています。
 大学生になって心理学の授業を受けるまで、心理学に対するイメージというものを持っていました。そのイメージを言葉にして伝えるのは少し難しいのですが、やはり人の心や精神的なものが強くあるのだと思います。今まで受けた授業の内容には、人を対象としていない実験・話や、統計に関係する授業もあります。よくよく考えるとあって当然なのですが、心理学の授業を受け始めるまでは、統計の話なんかは全く思ってもみませんでした。
 個人的な感覚ではありますが、『心理学特殊講義?』は入学前の心理学のイメージに一番合う内容です。

福嶋悠美
 心理学の実験というのは変わったことをすることが多い。そんなところも私が心理学というものに興味を持った一つなのだが、中崎先生の講義では、いろいろ変わった実験や学生の頃の実験の体験話を取り入れながら進んでいく。先生はよく例え話をするのだが、いままで自分のしてきた行動の謎がすっと解ける。
 先生の話で,特に覚えている話が二つある。一つ目の話はチョコレートを二つ用意して、一つを普通に食べる。そして特別なお茶を飲み、もう一つのチョコレートを食べる。すると、後から食べたチョコレートの甘みがお茶によって感じなくなり、苦くてまずくなったという話だ。これは歯磨きしたあとにみかんを食べるとおいしくないのと同じ現象である。もう一つの話は、目を閉じてカキ氷のイチゴ味とメロン味を食べ比べると、どっちがどっちだかわからないという話である。どちらの話も身近に起こりえる話だ。このような面白い話が毎回ある。
 私はこの「実験・行動」というのは心理学の中でもとくに興味をそそられるところだ。人間のさまざまな行動について考えるというのは、自分の行動でも当てはまることが多い。小さいころからの自分の行動の理由がわかるというのは、とても面白い。しかし、実際に講義を受けてみて思ったのが、思っていたより人間の行動は不可解で、複雑である。話を聞いていてもたまに混乱する。何気なく感じていたことを理論立てて考えると複雑で、よく昔の人は感情を言葉にして考えたなと感心させられる。

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