心理検査法

木場 深志

心理検査法の教材(知能検査)
 心理検査とは何でしょう。心理学事典には、「心理検査は、被検査者(検査を受ける人)に同一刺激を与え、そこから得られる反応の個人差から、知能、学力、性格、適性などの心理学的特性を測る用具」と書かれています。

 ある日のこと、突然近くの原っぱにUFOが降りてきたとします。地球を征服しに来たのかも知れないし、友好を求めて来たのかも知れません。やさしい宇宙人かも知れないし、そうでないかも知れません。言葉も通じません。そんなとき我々はどうするでしょうか。 まずは遠巻きにして見ているでしょう。宇宙人には人間たちの姿が見えるでしょう。UFOはひっそりとして、何の動きも見せません。この場合、「遠巻きにしている人間たちの姿」はUFOに対する入力(心理学ではこれを”刺激”と呼びます)であり、「何の動きも見せない」のは、この入力に対するUFOからの出力(これを心理学では”反応”といいます)です。次はどうしましょうか。ハンドマイクで呼びかけてみます(刺激)。UFOの窓に灯りが点きました(反応)。誰かが石を投げました(刺激)。UFOの屋根からアンテナのようなものが出ました(反応)。このように、刺激を順次変えていって、それに対する反応がどう変わるかを観察していると、やがて刺激と反応の関係から、UFOの中の宇宙人がどういう連中なのかという見当がついてきます。つまり宇宙人の目的、知能、性格などについての「仮説」がたてられるのです。この仮説に従って、宇宙人とのつきあいを始めればいいわけです。

 ここで人間がUFOに与えたいくつかの刺激のうちで、UFOについての仮説をたてるために有効な反応をUFOから引き出すことができた刺激は、次にまた別のUFOが降りてきた時にも使えるでしょう。やがてはUFOを知るための、ひとそろいの刺激のセットができます(刺激の標準化)。またこのような経験が蓄積されれば、どういう刺激に対してどういう反応が出るのは何パーセントぐらい、とか、こういう刺激に対してこういう反応を示す場合はネクラな宇宙人が乗っていることが多い、とか、様々なことがわかってきます(これが検査結果を解釈するための「解釈仮説」です)。
 これが、最初に書いた「心理検査は・・」の意味です。UFOとか宇宙人とかの部分を、知能、性格、学力、適性などに置き換えればいいのです。

 これでわかるように、心理検査は受検者の知能や性格についての真実を知るためのものではありません。真実は誰にもわかりません。我々にできることは、「有効な仮説をたてる」ことです。「有効な」というのは何のために有効かというと、たとえば臨床心理学では、その人の悩みや問題の解決のために有効な、あるいは援助・支援のために有効な、ということになるでしょう。

 この講義で学ぶことは、上記のような心理検査の基本的な考え方、標準化の手法、解釈仮説の導きかたなど、主に心理検査の理論的な部分です。理論だけではわかりにくいので、実際の心理検査の内容も説明し、時には実際の検査用具にふれてみるという経験もしますが、講義のねらいは基礎理論にあります。将来心理検査を扱うときに、また、自分の研究のために研究用の検査を作ろうとするときに、知識として欠かせない部分です。
(写真は講義で使用した知能検査のビデオの一場面です)

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