心理学初級実験

中崎崇志

心理学初級実験
 初めて心理学を学ぼうとする人に、『心理学ってどんな学問だと思う?』と、心理学のイメージを尋ねてみると、『他人の心が読める』とか『何を考えているか見透かされそう』という答えが、よく返ってきます。
 確かに、メディアに登場する心理学は、心理テストのようなもので人の心――とりわけ恋愛とか金銭感覚などの関心を引きやすい部分を読み取って、それを面白おかしく説明したり、あるいはさまざまな事件にまつわる人の心を逐一説明したりと、『心を読める』学問であるかのように扱われていますね。
 しかし、心理学は本来、『心を読む』ことができる学問ではありません。例えば、カウンセラーであっても、初対面の人と、話もせずにいきなりその人の性格がわかるわけではない。心理学は、本当はいろいろな材料・情報を集め、そこから“心の働き(心的機能)”を理解しようとする学問なのです。

 心理学における“材料集め・情報集め”に用いられる手法は、いくつかあります。今学期から開講したばかりの『心理学初級実験』では、そのうちの一つである心理学実験の手法を学びます。
 受講学生は、被験者・実験者・記録者にわかれて、さまざまな心理現象を、与えられたマニュアル通りに実験して確認します。最終的には、全員が被験者・実験者・記録者のすべての役割を経験します。この作業を通して、心理学実験の手法を身につけていきます。
 実験のテーマは、知覚に関するもの、記憶に関するもの、認知機能に関するもの、学習に関するものと、多岐に渡ります。テーマが違えば、それを確認するための手続きも違います。ですから、さまざまな実験を経験することを通じて、今後自分が心理学的な研究をしたいと思ったときに、どういう方法でやればいいかがわかるようになっていくわけです。マニュアルに記載されている手続きは、心理学の世界ではどれも基本的な実験操作ばかりですから、マニュアル通りにきちんとやることで基本が身につきます。
 もう一つ、この講義で大切なことは、レポートをまとめること。実験のレポート作成を通じて、データ処理の手法や、客観的で正確な文章の書き方を学ぶことも目的の一つです。自分たちがおこなった実験の結果を整理して図表を作り、それを正確に評価し、その内容を他の人に伝える文章を書く、という一連の作業は、大学を卒業してからも、さまざまな方面で役に立つスキルです。


 今学期から始まったばかりのこの講義、今の受講学生たちが“第一期生”ということになりますが、その学生たちの感想を聞いてみましょう。

三島佑介
 この講義ではとても変わった実験ばかりしていますが、目的が分かると、すごく面白くて心理学について理解していくのが早くなっていくように感じます。

吉田祐貴
 心理学の実験には以前から興味があり、実験の講義ができてよかったと思います。実験は同じ作業が続いて疲れるけど、結果が出たときは、驚きや発見があり、実験した甲斐があったと思わせてくれます。

長谷川陽香
 心理学初級実験では、興味深い実験ができて、毎回そのデータを元にレポートを書くので、本当に勉強になります。

暮石麻美
 実験をすることでいろいろな発見があって面白いです。でも、レポートをまとめるのに苦労してます。

堀田明希
 初めて心理学の実験をするので難しく思うことが多いけど、楽しいです。

森祐美子
 一見簡単な実験ばかりだけれど、結果がとても興味深く、心理学の奥の深さを毎回実感しています。

清水聡美
 思いがけない実験の結果で驚くことが多い。しかし、その結果が私たちの普段の行動につながっていることだと思うと、とてもおもしろい。

城地庸江
 教科書を見て考えるのではなく、考えながら行動するところが他の授業とは少し違う。それは難しいけど楽しい。実験は、実験者であっても被験者であっても記録者であっても、決して楽な役割はない。それだけ一つの実験をおこなうことは大変だと知った。だが、結果を出し、自分の手でそれをまとめ上げ、完成させると、自分たちがおこなった軌跡が残る。それがまたうれしい。そしてまた新しい実験をやってみたいと思う。

沖野大輔
 専門分野の実験で少し難しいですが、慣れると楽しいです。

岡野定孝裕
 実験後の結果の整理、考察の立て方が難しいです。

中村友美
 心理学は何もかも初めての事ばっかりだけど、実験は一番楽しい授業だと思いました。

長さの錯視
『長さの錯視』の実験。右の写真のような実験器具を使って、“ミュラー・リヤー錯視”の現象を確認します。被験者は、“<”と“>”の間の線分と、“>”と“<”の間の線分が等しくなるように調整するように指示されます。器具の裏には目盛りがついていて、どれぐらいの錯視が起こったかわかるようになっています。

大きさの恒常性
『大きさの恒常性』の実験。実験者は、左の写真のように実験器具を配置し、被験者(背中を向けている人)に、奥の三角形と手前の三角形が同じ大きさになったところで合図をしてもらいます。二つの三角形の距離は、3m、5m、10mの三通り。距離によって、三角形の大きさの見え方が変化するかどうかを検討します。測定の順番は、右の写真の記録者が決めて、実験者に伝えます。

レポート作成!
実験の順番待ちをする間はレポート作成。国内で刊行される心理学の学術論文の書式にしたがって執筆します。“自分のレポートを読んだ人が、まったく同じ実験をもう一回できるように書く”のが基本。電卓やパソコンを駆使してデータを整理し、グラフや表を見比べたりしながら、結果を正確かつ客観的に報告します。

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