謎の解明

横田 秀樹

青い空,白い雲 先日、あるテレビ番組で「リーマン予想」が発表されてから150年を迎えたと言っていました。リーマンといっても世界同時不況のものではなく、数学史上最難関の問題に関するもので、クレイ数学研究所から100万ドル!の賞金がかけられた七つのミレニアム懸賞問題の一つです。一見無秩序でバラバラに見える素数2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, 23, 29, 31, 37, 41, 43・・・がどのような「規則」で現れるかという問題なのですが、ドイツの数学者リーマンによる予想(仮説)は、その問題解明のためのとても重要な鍵だと考えられています。そして、最近の研究では、その規則が解明されれば宇宙全体の物理法則が明らかになるかもしれないと言われ(ゆえに、素数は「創造主の暗号」と呼ばれているらしい)、数々の数学者たちが解明を試みている大きな「謎」なのだそうです。直感的に、リーマン予想が解かれると「すごいことになりそうだ」とは感じますが、実際解明されてしまうと、例えば、現代社会のカードなどに利用されているデジタル系セキュリティなどはすべて解かれてしまうという問題もあるようです(専門家によるとそう簡単にはいかないそうですが)。

 実は、同じように一見無秩序に思える現象に潜む謎(規則)が、言語の世界にもあります。残念ながら?賞金はかけられていませんが、やはり同じように好奇心が大いにかき立てられます。例えば、世界の言語の関係(代名詞)節には、【主語>直接目的語>間接目的語>前置詞句目的語>所有格名詞句>比較】といった普遍的な階層があります(Keenan & Comrie 1977)。つまり、ある言語で間接目的語を関係節化できれば、その言語は必ず直接目的語も主語も関係節化できるということです。逆に、所有格名詞句で関係節化が可能なのに、間接目的語で不可能といった言語は存在しないということになります。そしてさらに、そのような規則性は第二言語の習得にも深く関わっています。例えば、英語の学習において、前置詞句目的語の関係節を先に教えられると、直接目的語や主語の関係節の習得は促進されますが、反対に、主語の関係節を先に教えられても、目的語や前置詞句目的語の関係節の習得はあまり進まないということが分かっています(e.g. Gass 1982, Eckman et al. 1988, and Jones 1994)。「なぜ」このようなことが起こるのか、こちらも解明されると、もっと簡単に外国語を習得できる方法が見つかるかもしれません。一見バラバラに見える世界の言語には、他にもこのような規則性がいろいろ存在します。それらを統一して説明できるかどうかは多くの研究者が取り組んでいるところですが、いずれにしても、そのような言語の規則性が「なぜ」人間の中に備わっているのか、興味はつきません。

 このような「謎」に考えをめぐらせると、ロマンのある不思議な感覚に満たされ、例えば、素数の「規則」が解明されると、人間の意識の法則やその他の自然現象のすべてが分かってくるのだろうか・・・と考えてしまいます(そう簡単なものではもちろんないと思いますが、夢があります)。暗いニュースが多く、一見つまらないように見えるこの世界にも、このような未解明の問題(謎)がたくさんあります(というよりほとんどが未解明です)。「そんなこと考えなくても生きていける」なんて言わずに、大学という場所で少しロマンを持ってこのような「謎」に迫ってみてはいかがでしょうか?

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