カーナビ雑感

木村 敦子

 車の運転はあまり苦にならない。高速道路での遠出や、初めての場所へいくこともさほど抵抗がない。以前はそんなとき道路地図が欠かせなかった。前もって出発地から目的地までの道順をたどり、この道がいい、あの道を通ろうと予定を立て走ってみる。あるとき地図を見て“この交差点で左折してこの道に入ろう”、と思って走っていたが交差点がない。何度もウロウロした挙句よく見回すとその道ははるか頭上にあった。高架になっていたのである。また、都市部の高速を走っていたら降りる予定のICがなかったことも(そのICは上りのみであることが後に判明した)あるし、地図ではあるはずの道路がないとか、ないはずの新しい道路がついているといったこともある。

 数年前に知人に“ぜったいいいよ〜”と勧められてカーナビをつけた。それまでカーナビについては「ナビに従って走ったら山道の藪の中を走らされた」、「道のないところを行けと指示された」、「海の上を走ることになった」といった噂を聞いていた(もちろん、信頼の置ける製品もあるのだろうと思ってはいた)。
 使ってみて、知らないところへも指示通りに行くだけで到着するので感動したが、ナビだと出発地から目的地までの空間地図が頭にできないことに気がついた。その場その場で右に曲がる、左に曲がるというだけで、全体として今自分が出発地と目的地の間のどの地点にいるか把握できないのである。これは、アナログ時計がデジタル時計になったときに感じた戸惑いと似ているなと思った。また、電卓が出てきたときの不信感にも似ていた(古い話で恐縮です)。数字を入れたらパッと答えが出てくるが果たしてこれは正しいのだろうかという疑いである。それまでは手計算かソロバンだったので、計算の途中経過がわからないというのは不安であった。そのどれにもやがて慣れてしまったが、なんだか便利になるたびに、それまで自分が持っていた何かの能力をなくしているような気もする。若い人たちはこういう能力を身につけられるのだろうかと気になったりする。

 ところで、今のカーナビは2台目(2代目?)である。変えてみてナビにも癖があることに気がついた。1代目のナビは、道案内以外のことはできなかったが、2代目は、「クルマが揺れています」とか、「この先混雑しています」とか、いろいろおしゃべりをする。「まもなく右折です」というタイミングがとても早い。1代目は100m前くらいで案内したのに、2代目は300m前で言う。それで、最初は何度も手前で曲がってしまって失敗した。都市高速を1つ手前の標識で降りてしまったこともある。
 また、案内する道筋が前のナビと違う。1代目は指示を無視して進むたびにその地点から一番近い道筋を探し直して案内した。2代目は、あくまで最初に指示した道に戻そうとする。一筋ずれているだけなのにUターンして戻る指示をするのだ。また、旧道が好きで、新しいバイパスがあるのに曲がりくねった細い旧街道を通らせようとする。あるときフッと、自分がいつの間にかカーナビを兄弟のように比較している自分に気がついた。育児の心得に、兄弟を比較してはいけないというのがあるが、それを思い出してちょっと反省した。一人ひとり(?)の個性を大事にしないといけないのかも・・しれない。

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