知能とは?

ゴードン・ベイトソン (訳:小原 金平)

 息子が生まれたとき、彼にはできるだけ素晴らしい人生のスタートをプレゼントしようと思いました。それで、周りの人から話を聞いたり、あちこちの図書館へ行ったり、あるいはインターネットで子供の知能についていろいろと調べてみました。そして、多重知能の理論という考えを知りました。その理論では親が子供のすべての知能を刺激するようにと勧めていました。私は不思議に感じました。知能というのはIQ値で計測できるひとつしかないものだと思っていたからです。一人の人間が複数の知能を持つことが可能だとはどういうことだろう。私はさらに調べてみようという気になりました。

 多重知能について最初に本を書いた人はハーバード大学のハワード・ガードナー教授でした。彼は『心の構成(仮題)』(英:Frames of Minds)という本において、最初7種の知能を区別しました。

  1. 言語的知能:ことばを使用する知能。
  2. 論理数学的知能:数、記号、図形を扱う知能。
  3. 音楽的知能:リズムと音のパターンを扱う知能。
  4. 空間的知能:イメージや映像を扱う知能。
  5. 身体運動的知能:身体と運動を扱う知能。
  6. 対人的知能:他人とのコミュニケーションを扱う知能。
  7. 内省的知能:自己とその精神的リアリティーという内的側面を扱う知能。

 こうした様々な知能について読んでみて、私は父親として自分のするべきことは子供のこうした知能を伸ばしてやることだと知りました。どうしたらこれができるのだろう。

  1. 言語的知能を伸ばすため、英語と日本語で話しかけた。周りのものやものごとの仕組みをことばで説明してやった。
  2. 数学的知能を伸ばすため、暗算をやらせてみた。
  3. 音楽的知能を伸ばすため、一緒にピアノを弾いて楽しんだ。私のピアノに息子が部屋の中で踊りまわることもあった。
  4. 空間的知能を伸ばすのはこういうことの苦手な私には容易ではなかった。でも、自分なりに努力してデジタルカメラでいくつかおもしろい実験をやってみた。
  5. 身体運動的知能を伸ばすのは簡単なことで、公園へ行ってサッカーや野球やクリケットをしたのだった。
  6. 対人的知能を伸ばすために、パーティをして友達や親戚を招き、息子が年代の違ういろんな人と話す機会を与えた。
  7. 内省的知能を伸ばすためには、よく息子に自分の気持ちをことばに出して言わせてみた。本の登場人物がどんな気持ちでいるかを理由もつけて言わせてみたりした。

 多重知能の理論についてさらに知り、実行に移してしているうちに、ますますこの理論には効果があると思うようになりました。そこで、私は自分自身の生活にもこの理論を応用するようになりました。毎週それぞれの知能を刺激するようなことをやってみるのです。こうすることで毎週の計画が充実し楽しいものになりました。

 この多重知能の理論はまた私の大学生の学習指導にもひらめきを与えてくれました。それで、学生にも7つの知能全部を使うような活動を授業に取り入れてみました。つまり、話す練習、絵を描く練習、聞く練習、音楽活動、教室の中で動くことが必要な活動、対人的活動、そして内省的活動です。こうすることで、学生たちは皆自分の得意な知能を楽しんで使い、同時に弱い知能を伸ばす機会が持てるのです。

 私の息子はもうすぐ中学生になりますので、彼の勉強に私が大きな影響力を持つということはもうありません。しかし、彼と一緒に多重知能の理論について学んだことに私は感謝しています。きっとこの理論は私たち二人が自分自身や周りの人をよりよく理解する助けとなり、さらにはより充実した生き方ができるようにしてくれたことでしょう。

参考文献
Howard Gardner, Frames of Mind. Basic Books, 1983

英語の原稿はこちらです

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