英語Haiku:読んでみませんか? 作ってみませんか!

川畑 松晴

「古池や...」"The old pond ..."

 俳句と言えばやはり芭蕉から始めなければなりませんね。彼の代表作「古池や蛙跳びこむ水の音」の英訳を見てみましょう。世界でもっとも広く知られているこの句には、150を越える英訳があるそうです。ここでは、その中の3首を示します。あなたはどれが好きですか。

1. The old pond;
A frog jumps in,-
The sound of the water.
(R.H.ブライス)
三つのtheが気になりますが、
妥当な訳だとおもいます。
2. Old pond –
Frogs jumped in –
Sound of water.
(ラフカディオ・ハーン)
これにはtheがありません。
俳句では冠詞は省略可です。
複数の蛙が跳びこむのも滑稽ですね。
3. The old pond!
A frog leapt into –
List, the water sound!
(リチャード・ライト)
これも上と同様過去時制です。
List(en)のように「意訳」をするのも時には良いでしょう。

 どれが正しいではなく、どれが好きですか、またはどれが訳として適当だと思いますか、という観点で考えることです。 なにしろ、150以上の訳がなされているのですから。 私は、ブライスとライトの訳を組み合わせて「The old pond; A frog jumps in,- The water sound!」としたいですね。 この訳もたぶん、誰かがすでにやっているでしょうが。

「朝顔や...」"Ah, morning glory! ..."

 では、郷土の著名な女性俳人加賀の千代女(金沢市郊外松任の人、江戸時代中期)の有名な一句はどうでしょうか。

「朝顔やつるべとられてもらい水」

4. Ah! Morning Glory!
The bucket taken captive!
I begged for water.
(大拙)
;, -,!等は切れ字の役割り。
captiveは意味の重い語ですが、
3連共に主語が異なる、
その独立性が気に入っている。
5. A morning glory
Has taken the well-bucket:
I’ll borrow water.
(リチャード・ライト)
これも5-7-5。
ライトは訳も自作の俳句も平明ですね。

 私は大拙の方をとる。俳句では過去形は用いず、新聞の見出しのように現在形で表すことが多いのですが、この句は明確に過去としたい。ライトのように未来形の解釈も可能ですが。

 さて、代表的な日本の俳句の英訳をいくつか見てきましたが、たぶん、気づいたように、Haikuでは、5-7-5の拍(日本語では、英語の音節をモーラ又は拍と表現する)を必ずしも守る必要がありません。むしろ、英語俳句では、冗長を避けるために、3-4-4のようなリズムも好まれます。

 アメリカの文学者J. カーカップは芭蕉の「古池や...」を次のように訳しました。

6. pond
    frog
        plop

 これは極端な例ですが、うまく雰囲気はつかんでいますね。

自分で作ってみませんか!意外に簡単ですよ!!

 さて、訳も面白いが、自分で自由に作ってみてはどうでしょうか。これが意外に簡単なのです。私がそのように思えたのは、リチャード・ライト(1908-1960)のHaiku作品を延々と読み続けた時でした。ライトはアメリカの黒人作家。Haikuは彼の余技です。

リチャード・ライトのHaiku

 彼は、白人による人種差別を題材とする「過激な」作品(Black Boy, White Man, Listen!など)を書いた科(とが)で国外追放され、パリ郊外で貧窮の内に寂しく病死しましたが、最後の2年足らずの間に約4000首の俳句を作ったそうです。

 私が彼の句を好きなのは、きっちりと5-7-5の拍/音節を守っており、かつ平明に読める作品が多いからなのです。実はライトは禅も学んでおり、彼の散文学に横溢する黒人差別への怒りや人類平等への希求が自然の風物を題材とする俳句に込められているようですが、まずは、表面的な風景の作として「素直に」読むことから入ればよいでしょう。

 4000首の作品からライトが自選した817首からなる句集 HAIKU-This Other World  の冒頭がこれです。

7. I am nobody:
A red sinking autumn sun
Took my name away.
最初のこの一句に彼の禅の「無」の境地が披瀝されている?
季語も入り、きっちり5-7-5である。
春の句
8. Like a spreading fire,
Blossoms leap from tree to tree
In a blazing spring.
日本の桜の春にも当てはまるのでは。
卯辰山の桜を遠望した句?しかし、
fireは強烈。霞とはほど遠い、異国の春だね。
未だ生き方の定まっていない多くの若者に対する警句?
9. Make up your mind, Snail!
You are half inside your house,
And halfway out!
なんとユーモラス、
なんと人生訓的!
スズメの詩
10. All right, You Sparrows;
The sun has set and you can now
Stop your chattering!
いいねー。そして、僕にも作れそう!
「すずめ君、日も沈んだよ、静まりな!」
蛙の詩
11. Glittering with frost
A dead frog squats livingly
In the garden path.
一茶の蛙とも芭蕉の蛙とも違う、
黒人の抵抗蛙?
スミレの詩
12. I cannot find it,
That very first violet
Seen from my window.
これは単なる風景?
それともスミレは何かの象徴?
誰にも作れそうな句
13. A man leaves his house
And walks around his winter fields
And then goes back in.
日常生活の詩?、
それとも深遠な人生の詠(うた)?

 その他、彼が少年時代を過ごしたミシシッピイ州の片田舎や、病気が重くなる前に楽しんだという庭仕事に題材を得たと思われる作品が目白押しです。興味のある方は、私の研究室へどうず。彼の句集を貸してあげますよ。

 最後に自分の駄作を披露して終わりましょう。

ウグイスが友達
14. A warbler, unseen
Twittering in the bush away
Is my good neighbor!
ゴールデンウイークを自宅で一人寂しく過した時の句。
雲雀もそうですが、鶯は声ばかりで姿を見せない鳥ですね。
本学のキャンパスからの遠望
15. In the morning glow
Snow-capped mountains far around
May bless us all!
白山連峰の神々しさに気づいていますか。
第3連には他の様々な想いを表現することもできるでしょうね。

 さあ、皆さんも、ここで紹介された作品の一部を借用してもいいですから、自分のHaikuを作ってみませんか。 また、インターネットで<英語俳句>のキーワードを入れてみてください。 面白いページが沢山読めますよ。

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