脳の持つ能力を信じて【リレーエッセイ:書評】

中島 彰史

『記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶の仕組みと鍛え方』 池谷裕二著 2001年 講談社

 私は弓道部の部長をしています。大会の成績を大会後少しの間は記憶していますが、時を過ぎると細かいところは忘れてしまいます。
 ところが、監督をされている先生は、誰が何中したかとか、誰がその試合の大前(団体戦で最初に引く人のこと)だったか、といった細かな事柄をかなり前の大会のものでも記憶されています。いつも感心させられます。

 『記憶力を強くする』という本書は、「脳科学から見た記憶」、「記憶の司令塔「海馬」」、「脳が記憶できるわけ」「科学的に記憶力を鍛えよう」といった内容を扱っていますが、興味を持った項目について述べます。


【神経細胞の数】
 脳の中の神経細胞は生まれた時が最も多く、年齢を重ねるにしたがってどんどん減っていくが、記憶を司る海馬の中の或る細胞(顆粒細胞、と言います)は増殖するという特殊な能力があるということ、そして、海馬は2歳から3歳くらいでほぼ完全な形になる(これが幼児の頃の思い出がないことの原因になっている)ということ。そして、顆粒細胞の増殖に関する研究結果が提示されていて、例えば、軟らかいものばかり食べていると顆粒細胞の増殖が減ってしまう、一人孤独で過ごすより、社会に出て積極的に他人と交わった方がより増殖しやすい、などです。
 脳の中の細胞は減る一方だと思っていたので、増殖する細胞があるということを知って驚き、また、記憶という人間らしさが最も反映される能力にかかわる細胞にのみ増殖する性質があるとは、何とも不思議であり、嬉しくもあります。

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2013年度公開講座のお知らせ

 今年度の国際文化学科の公開講座「文学のたのしみ」が,下記の予定で開催されます。
 聴講は無料です。たくさんの方のご来場をお待ちしています。

 ●日時:7月6日(土)13:30~16:30
 ●会場:金沢市立玉川図書館(金沢市玉川町)
 ●講師:
  木梨由利(国際文化学科教授)
  水井雅子(基礎教育機構教授)
 ※お車でのご来場はご遠慮ください。公共交通機関のご利用をお願い致します。

 

※終了しました。多数の方々にご来場いただき,ありがとうございました。

2013年度第1回オープンキャンパスのお知らせ

 来たる6月16日(日),2013年度第2回オープンキャンパスが開催されます。国際文化学科では,以下のオープン授業をおこないます。
 受験生、高校1・2年生、保護者のみなさまのご参加をお待ちしております。

※終了しました。多数のご来場,ありがとうございました。
 なお,第2回オープンキャンパスは,8月2日(土)に開催致します。

>>オープンキャンパスの詳細はこちらをご覧ください。

心理学で発達的変化をとらえる方法 【心理学コラム】

前川 浩子

 今年も4月に健康診断がありました。この年齢になると、一年前の結果に比べて身長が伸びていたということはありませんし(むしろ、数ミリ縮んでいることにショックを受けるのですが)、一年前どころか、中学生の時から私の身長はずっと横ばいのまま、変化はないと言えるでしょう。しかし、たいていの場合、思春期あたりまで、人の身長や体重といった身体的特徴は時間の経過とともに変化していくことはよく知られていることです。そして、このような身体的特徴だけでなく、私たちの行動や心の働きが、時間の経過とともにどのように変化するのかを明らかにすることも、発達心理学の分野ではとても重要なことだと考えられてきました。発達心理学では、この「時間の経過による変化」を調べるために、2つの方法が一般的に用いられてきました。一つは横断的研究(cross-sectional method)、もう一つは縦断的研究(longitudinal method)です。

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先生方からの御挨拶

 3月で退職された小原先生,そして4月に新たに着任された大滝先生,坂東先生から,皆さんへのメッセージです。

挨拶

小原 金平

 この度、慣れ親しんだ学園を去ることになりました。お陰様で、恵まれた研究環境と自然環境の中で、充実した教育研究生活を送れたことに感謝しています。
 国際文化学科の同僚の先生方との語らい、学生の皆さんと過ごした教室内外での楽しかった時間は忘れることのできない思い出です。
 教職員の皆様にも大変お世話になりました。心よりお礼申し上げます。


着任の挨拶

大滝 宏一

 2013年4月から文学部国際文化学科の一員となりました大滝宏一です。

 「大人である我々は外国語を学ぶのにこれほど苦労するのに、なぜ子どもは何の苦労もなく生後数年で母語を獲得できるのか?」恐らく誰でも一度は感じたことがあるであろうこの問題が私の主な研究テーマです。
 子どもは周りの大人が話しているのをまねして言葉を習得すると思われがちですが、子どもの言語活動をよく観察してみると、生後受ける経験(インプット)だけでは説明できないほど複雑な言語知識を持っていることがわかります。それでは、子どもはどのようにしてそのような複雑な言語知識を身につけるのでしょうか。

 「生成文法」と呼ばれる言語学の立場では、人間は誰でも生まれながらに「言語の種」を脳内に持っていると考えます。この「言語の種」は生後受ける経験に従って、日本語や英語やヘブライ語といった個別の言語に変わるわけですが、すべての言語に共通する性質についてはこの「言語の種」に遺伝的にプログラムされているので、子どもは学ぶ必要はありません。
 従って、この「言語の種」を仮定すると、子どもが生後受ける経験以上の言語知識を持っていることが説明できます。

 問題は、そのような「言語の種」が本当に存在するのか、また、もし存在するのであれば、それはどのような特徴を持っているのか、ということにあります。
 この問題には、受験勉強のときのように予め用意された答えがあるわけではありません。答え(真実)に近づくためには、自分の頭で考え、これまで明らかにされていなかった事実を発見していく必要があります。一見難しそうに聞こえるかもしれませんが、一度その楽しさを味わったらやみつきになります。
 金沢学院大学では、言語学を通して、自分の頭を使って考えることの楽しさを学生に感じてもらえるような授業をしたいと思いますので、言語に興味がある人はぜひ覗いてみてください。

 

着任の挨拶

坂東 貴夫

 皆さん、初めまして。本年4月に講師として金沢学院大学に着任しました。

 私はこれまで、愛知県内の大学で英語講師として教鞭をとると同時に、英語学習者を対象にした文処理研究をしてきました。
 「文処理研究」というと何だかよくわからない方も多いかと思いますが、簡単に言うと、ある文を読んでその意味内容を理解するまでのプロセスに関する研究です。学習者がどのように英文を理解するかというプロセスを研究することによって、より良い指導に活かしていきたいと考えています。

 また最近は、文法項目別の習得順序や習得困難度にも興味があり、「何故、複数形の-sや3単現在の-sは見落としやすいのか」や「何故、助動詞の後に動詞の原形を使うことはすぐに出来るのか」といった現象を読解時間や視線の動きを計測することにより研究しています。このような研究も将来的に教育に活かしていきたいと思っています。

 文学部では、一年生・二年生対象の英語科目を担当します。
 履修する皆さんには、リーディング・リスニング・英文法・発音について中学・高校で学習したことをもう一度復習していただくとともに、これまで知らなかったことも同時に学んで欲しいと思っています。ガイダンスの時にも述べましたが、皆さんが自発的に学習されることを期待しています。
 そのためにも「学生時代に何をしたいか」や「英語を使って何をしたいか」等について、自分なりに目標を立ててください。そして、その目標に全力で向かっていって下さい。よろしくお願いします。